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Memorial Service for Ivan C. Karp

 


 今年1月、NY、ソーホーで見た一枚の絵が気になり、短い滞在中に再度そのギャラリーを訪ねた。火の点いたジッポーを描いた油彩画で、ギャラリーのアシスタントが「James Del Grosso "Lighter"、12500ドル」と、紙片に書いてくれた。と、そこに大柄の男が入って来てカウンター内に座っている老人と会話して、外へ出て行った。
 展覧会カタログを物色していると、その老人がゆっくり立ち上がった。一目で高価と思える眼鏡を掛けている。笑みを含んで「彼はロシアからの移民で今はホームレスで、2週間に1回、絵を見せに来る、もう少ししたらまた来るから。」と、何故か、カウンター越しに私達に向かって言った。
 ほどなく布でくるんだ絵を抱えて彼は現れた。柄の良いほころびたセーターと黒ずんだ爪、ちょっとした臭気。恥ずかしいようで嬉しいような期待感をたたえた表情で包みを開き、老人の前に立って絵を見せた。トランプのキングのような絵柄だった。そしてまた二言三言会話し、絵を包んで立ち去った後、何故かまた老人は私達に向かって「テクニックはすごくある、オリジナリティがないんだ」と言う。

 高級煙草店と新品よりも高いハイセンスな中古洋品店がビルの一階に並ぶこのギャラリーで毎月くりかえされてきた出来事を垣間見る感動的な一瞬だった。極端に言えばアートがそのまま経済活動であることを思い知った。ギャラリーの名前はOK HARRIS WORKS OF ART。帰国後、NYに住んでいた友人に話したら、絵を見ていた老人は60年代、レオ・キャステリ・ギャラリーでウォーホルやリキテンシュタインを見出した人物、アイヴァン・カープその人であった。氏が独立して作ったこのギャラリーには購買欲を刺激するアートが並んでいる。
 この6月、アイヴァン・カープ氏は86歳の生涯を終えた。ギャラリーのメールマガジンによれば、誰もが参加できる追悼会が10月16日に開かれる。先日亡くなった写真家・吉村朗さん(享年53歳)とともに、お二人のご冥福を祈ります。

「レオは美術史に造詣が深いし、視覚的なセンスがすごくいい。だが、彼に新しいアーティストのスタジオをひっかきまわして冒険させるようにしむけたのはアイヴァンのほうだった。若いアイヴァンは、新しい可能性に心をひらいていた。彼は堅苦しいアートの哲学に閉じこもってしまうようなことはなかった。」
               ~ ウォーホル自伝「ポッピズム ウォーホルの60年代」文遊社刊 より


Memorial Service for Ivan C. Karp:
http://www.okharris.com/memorial.html

The NewYork Times June 29, 2012 "Ivan Karp, Pop Art Dealer, Dies at 86" :
http://www.nytimes.com/2012/06/29/arts/design/ivan-karp-pop-art-dealer-dies-at-86.html?_r=1


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by y-ob | 2012-10-13 12:17