西暦2000年前後まで毎年6月、ヨーロッパの辺境にある国々を撮影していました。ポルトガル、リトアニア、トルコ、クロアチア、スロベニア、北部ギリシャなど。東アジアには梅雨があるので、不快な季節である6月、しかしヨーロッパでは一年でもっとも快適な、美しい季節でした。
 ところが、まず、夏のクロアチアで異常な暑さを体験し、その翌年、やはり夏のギリシャ北部マケドニアで考えられないような灼熱の中、クルマのエアコンすら利かない状態で旅をして以来、夏のヨーロッパへの足が遠のいてしまった。
 ちょうどその頃、真冬の寒さになぜか惹かれる気がしました。以前、日本の国境を撮影した折、サハリンでの撮影をどの季節にするか迷って、やはり寒いのはイヤだと思って夏に行ったことがありましたが、この、熱い夏がつづく今、北海道の冬の寒さが逆に心地よいような気がしてきたのです。天邪鬼なのかどうか、相対的なことでしょう。
 雪の積った雑木林の中をカンジキをつけて歩き、静かに息を吸うと元気な気分になってくるのが不思議だ。その時、「冬そのもの」を撮影したいという気分になったのです。

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写真=サハリン ’97年夏撮影 
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# by y-ob | 2008-01-14 15:04
 この撮影が始まった時、最初のロケハンで初めて釧路の柳町スピードスケートリンクを見た。ここでコースレコードを出した選手には現在活躍中の方々も多く、この地方のスケートのメッカと言っていい場所です。
 釧路の冬は雪ではなく氷の季節、快晴で低温の日々がつづき、全てのものが凍りつきます。そういう気候の夕方は空気が澄み渡り、リンクが一番きれいに見える時間だ。ここから巣立った選手の方々は、この町のこのリンクを誇りに思えるんじゃないでしょうか。
 最近のウインタースポーツはスキーよりもスノーボードのようですが、屋外の広いリンクでスケートをする素晴しさは、飛行機に乗って行っても損はしないくらいのものだと思います。
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写真=釧路市 柳町スピードスケートリンク
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# by y-ob | 2008-01-05 22:38
 この写真集に収録したスケートの写真の多くは別海町のスケート少年団を撮影したものです。詳細は本を見ていただくとわかるのですが、一部の写真の初出は全日空機内誌「翼の王国」2005年1月号の特集「別海スケート少年団白鳥」です。
 12月30日発売の季刊誌”en-TAXI”vol.20・2008年冬号(発行:扶桑社)で、美術家・大竹伸朗氏がこの特集を機内で見たことについて書かれています。(「指先の星屑・別海高校美術部との時間」)ご興味のある方は、ご覧ください。親しくしてもらっている文筆家のSさんが教えてくれました。
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写真=別海町営スケートリンク
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# by y-ob | 2007-12-31 15:35
 陸別から更に北へ進み池北峠を越えると置戸。町中に旅館が少なく、泊めてもらったのは若者交流センター。自宅が遠くて町の学校に通えない高校生たちも住んでいる施設でした。宿泊料は3000円。誰でも泊まれます。
 ここから更に大雪の裏側に向かって山奥へと入ったところに鹿の子温泉があります。施設は古いけれども湧き出す温泉がすばらしく、食事も相当おいしい。玄関脇に駐車すると、犬が飛び出してきた。せんべいを投げたらずっとついてきて、もうなにももらえないとわかると、穴を掘りはじめました。猟師からもらった鹿の骨、雪の中に隠したのを思い出して掘り起こしくわえて走りまわっている。
 気づいたら激しく雪が降り始め、犬の顔が雪の結晶まみれになっていました。
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# by y-ob | 2007-12-30 15:35

「二月」~①陸別の雪

 北海道、池田町から北見市へ向かう途中には小さな町が点在しています。そのひとつ、陸別は日本一寒い町として知られています。鉄道駅(07年に鉄道は廃止)はオーロラハウスというホテルになっていて予想外に訪れる人で混んでいました。町はずれの山頂に銀河の森天文台があり巨大な反射望遠鏡で昼間も星を見ることができます。昼の空を肉眼で見ても何も見えない、そして望遠鏡をのぞくと土星の環がはっきり見え、不思議な感覚。
 その夜、食事する店をさがして歩いている時に音もなくチラチラと雪が落ちてきました。街灯の光を受けて、結晶ひとつひとつが回転しながら。袖に落ちた雪はすべて完全な結晶状態で、ダウンジャケットに細かい雪の模様がついたように見えました。電光の温度計はマイナス15度、無風なのでそれほど寒さは感じず、結晶はそのまま服の上で光っている。平地で完全な結晶が見えるのは限られた場所だと思います。
 翌朝はマイナス30度、この年の国内最低気温で、外に出ると無風でもかなり寒く感じました。20年前ならば、マイナス30度はよくあることだったのではないでしょうか。僕の知っている範囲で北海道の最低気温はマイナス43度。このような時、雪はそのまま重なり、風が吹くと地吹雪となって舞い上がります。積もっている雪を凝視すると、全てが結晶のまま重なりあっているのがわかります。
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写真集「二月」所収、雪の写真
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# by y-ob | 2007-12-29 13:47